2016年度~2017年度活動方針

ストップ・ザ・格差社会!
すべての働く者を連合の輪へ 「安心社会」を切り拓こう!

 
1.はじめに
(1)東日本大震災からすでに4年半が経過し、復興の槌音が聞こえるようになり、ようやく一筋の光が見えてきたが、それはまだ全体のごく一部でしかない。まだまだ多くの人々が、仮設住宅などでの不自由な暮らしを強いられ、現在も約22万5千人もの人々が避難生活を余儀なくされている。また、復興の地域差や個人差が大きくなり、光と影の差が拡大し、街のにぎわいの回復や、長期にわたる避難生活による心身の健康など課題が山積している。
 私たちは、これからも被災地の復興と再生に向けて力を尽くすとともに、震災の教訓を決して風化させることなく、被災地との絆を深め、安定的な雇用と安心な生活の確保に取り組まなければならない。

(2)日本経済は、「1990 年代初頭のバブル崩壊後、およそ四半世紀ぶりの良好な状況を達成しつつある。企業収益は顕著に改善し、上場株式の市場評価額は1989 年以来25 年ぶりに過去最高を更新。景気回復が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資の増加に結び付くという経済の好循環が着実に回り始めている」との認識である。
 しかし、傷んだ雇用と労働条件の復元は後回しにされ、働く者の暮らしは依然として厳しい。働く者への分配(雇用者報酬の総額)は、デフレ経済前の水準(1998年度)を20兆円以上下回り、非正規雇用比率は大幅に上昇し、格差が拡大している。企業行動も、短期利益を優先する傾向が強まる一方、「人への投資」がおろそかになり、いわゆるブラック企業も社会問題化している。経済のグローバル化が進み、企業組織再編や多国籍企業の行動が労使関係に影響を与えるケースも増えている。税・社会保険料の負担が増える一方で、「社会保障と税の一体改革」で示された社会保障制度の機能強化が先延ばしされている。雇用不安と将来不安を払拭し、雇用労働者の7割を占める中小企業で働く仲間、そして約2,000万人の非正規労働者の「底上げ・底支え」「格差是正」が進まなければ、日本再興は成し得ない。
 我々は時代の大きな転換点に立っていることも忘れてはならない。グローバリゼーション、人口減少・少子高齢社会、価値観の多様化など構造的な変化に対応したパラダイムシフト※1)を迫られている。家族と企業に依存した、いわゆる日本型福祉社会の前提条件は大きく変化した。男女平等参画社会やワーク・ライフ・バランス社会の視点が重要になっている。あらためて、戦後築かれていた経済社会システムの何を残し、何を改めていくのか中長期の視点から課題を整理し、次の時代を主体的に選択する時を迎えている。
※1)その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化すること。

(3)国政に目を向ければ、昨年12月に「アベノミクス解散」による第47回衆議院選挙が行われた。度重なる「政治とカネ」の問題と、アベノミクスの停滞による政権崩壊を避けるための選挙であり、突如として行われた解散総選挙であったため、国民に民主党の政策は浸透せず、自民党の圧勝という形で終わった。
 安倍政権は、この強大な力で、2度にわたって廃案となった労働者派遣法改正案を三度国会へ提出し、9月11日の衆議院本会議で賛成多数で可決成立した。「生涯派遣で低所得、低処遇」を増大させ、これからの将来を担う若者から、安定した雇用を奪う法案の成立を今後も許すわけにはいかない。また、国民の疑問や懸念が払拭されていない中、国民的合意形成や立憲主義の原則が無視され、「安全保障関連法案」が参議院において強行採決された。衆議院憲法審査会の参考人質疑において、憲法学者全員が、法案は違憲であると判断したが政府は真正面から否定している。さらには、政府に批判的なマスメデイアに対し圧力をかけ、異なる意見を封殺するなど、その暴挙はとどまることを知らない。今後も自民党の膨大な数の力で、矢継ぎ早に政策が断行される危険性がある。こうした動きに対し、断固たる姿勢で対峙していかなければならない。

(4)このような状況下で行われた第18回統一自治体選挙では「働くことを軸とする安心社会」をはじめとする政策実現に向け、「働く者・生活者」の立場にたった地域の政治勢力拡大をはかる重要な闘いと位置づけ、積極的な取り組みを展開してきた。
 全国における各級議会議員選挙の結果を総合すると、組織内候補者は前回の約9割にあたる候補者を推薦し、総定数が減少する中93.15%の議席を確保した。しかし、対応方針に掲げた「働く者・生活者」の立場に立った地域での政治勢力の拡大にはつながらなかった。
 組織内議員候補擁立の環境が厳しさを増す一方で、地方分権が推し進められている現状において、地方議会における地域の政策実現に向けた労働組合の社会的責任は増している。

≪参考≫連合本部の今期2年間の運動基軸

 運動体としての組織基盤の強化に引き続き取り組むとともに、新たな運動の芽を伸ばしながら、「働くことを軸とする安心社会」の実現にむけ、連合の考え方を積極的に発信し行動する2年間にしていく。

 特に、いまの社会の流れを変えていくために「底上げ・底支え」「ディーセント・ワーク」「支えあい・助け合い」の運動に取り組むとともに、将来に向けた長期展望を視野におく。また、「組織力」「発信力」「政策立案能力」「政策実現力」に一層の磨きをかけ、連合運動への求心力を高めていく。以下を運動の基軸とし、各論の取り組みと合わせ、連合運動を推進していく。本運動方針に基づき、必要な運動のエネルギーと資源の重点化をはかるとともに、関係団体や志を同じくする団体・個人とも連携をはかりながら運動を推進する。

【横断的に取り組む運動の基軸】

(1)総掛かりの開かれた取り組みによる底上げ・底支えの実現に取り組む

(2)働かせる側の論理で生活時間を奪い雇用の質を劣化させてきた流れを反転させる運動を構築する ~すべての働くものにディーセント・ワークを~

(3)よい社会をつくるため、志を同じくする組織・人と連携し、自らが行動する

~支えあい・助け合いの運動を通じ、市場万能・短期利益最優先の風潮を変えよう~

(4)人口減少・超少子高齢社会を長期的に展望し、労働運動が取り組むべき課題について検討する。

【運動のパワーアップをはかるために】

(1)「組織力」を強化する。

(2)内外における「発信力」を強化する。

(3)「政策立案能力」を高める。

(4)「政策実現力」を高める。

 
2.連合山形2年間の運動を振り返って
連合山形は第26回定期大会で掲げた方針達成のため、構成組織と一体となった取り組みを展開してきた。以下、2年間の特徴的な取り組みを振り返ってみる。

(1)組織拡大を活動方針の第一に掲げ、連合本部「1000万連合実現プラン」にもとづき、連合山形は組織拡大委員会を中心に「第5次組織拡大3ヶ年計画」(2012年度~2014年度)を年間1,000人の組織人員増を目標に取り組んできた。しかし、具体的な成果は上がらず、それとは逆に景気の長期低迷化やグローバル化などの要因により組織人員が減少し、目標には到底及ばなかった。
 これを受け、2014年10月に「第6次組織拡大3ヶ年計画」(2015年度~2017年度)を策定し、連合本部・連合山形・構成組織が三位一体となり、具体的にはオルグリストをもとに、地域協議会と構成組織がスケジュール化し、アドバイザーも同行しながら組織拡大の取り組みを強化してきた。
 この1年で、大きな成果は見られなかったが、本格的に組織拡大への取り組みが動き出し、この継続した取り組みにより連合加盟や組織化が実現する見込みとなっている。

(2)第6次組織財政確立検討委員会(2012年11月~2014年11月)について、機関会議や組織運営、財政課題に取り組みおおよそ目標が達成できた。しかし、組織人員の減少や、それに伴う会費の減少、本部交付金の減額など新たな課題があることから、「第7次組織財政確立検討委員会(2015年10月~2017年11月)」を立ち上げ、連合山形の継続的な組織の発展と健全な財政運営をめざし取り組んでいる。

(3)全国的に猛威を振う自然災害に対し、労働組合の社会貢献活動の一環として、災害支援ボランティア活動を効果的・円滑に推進するため「連合山形災害支援ボランティアネットワーク運営マニュアル」を策定し、NPOや社会福祉協議会との連携にも努めてきた。

(4)2015春季生活闘争では、すべての組合が重点的に取り組む課題として「賃上げ」「時短」「政策・制度実現の取り組み」を「3本柱」として位置づけ、「底上げ・底支え」「格差是正」の実現と、「デフレからの脱却」と「経済の好循環実現」に向け取り組んできた。
 具体的には「中小労働運動委員会」を中心として、構成組織と連合山形が連携し、月例賃金にこだわる闘いを進め、賃金カーブ維持相当分を確保し、過年度物価上昇分はもとより、生産性向上分、格差是正分としての賃金改善分2%以上の要求を掲げ、「底上げ・底支え」「格差是正」に全力をあげ取り組んできた。また、要求未提出組合について、要求書提出に向けた支援や、2015春闘勝利に向け県内6地域協議会をタスキリレーし、春季生活闘争の重要性を広く県民に訴える取り組みを行ってきた。

(5)最低賃金引上げへの取り組みでは、中央最低賃金審議会における目安を尊重しつつ、地域における賃金実態、生活実態・生計費を重視し、連合リビングウェイジ(都道府県における単身者の最低生計費をクリアする賃金水準)850円への早期引き上げを求め審議会に臨んできた。この結果、地域別最低賃金を2年間で31円(2014年15円、2015年16円)引き上げることができた。しかし、全国加重平均に及ばない結果となり、大都市との格差が拡大する結果となった。

(6)通年で実施している「なんでも労働相談ダイヤル」は、年間224件の相談を受けており、地域に見える連合山形の運動のひとつとして、未組織労働者や県民から頼りにされる取り組みとなっている。また、労働相談から発展したケースでは、「れんごう山形ユニオン」が個別的労働紛争の円満解決に向け、労働委員会へあっせん申請するなど取り組んできた。

(7)「労働者保護ルール改悪阻止」と「年金運用のガバナンス体制構築」を広く県民に訴えるため、「STOP THE 格差社会!暮らしの底上げ実現」キャンペーン全国統一行動において連合山形および各地域協議会が同時間で集会を開催し、県内6地域協議会でタスキリレーを行ってきた。また、連合山形推薦議員と連携し県市町村議会に意見書の請願を行い、多くの議会で採決に取り組んできた。

(8)男女平等参画の推進について、「連合山形第4次男女平等アクションプラン(2014年11月~2020年10月)」を策定し、具体的な数値目標などの達成に向け、第7次組織財政確立検討委員会へ提案し、実行に向け取り組んできた。併せて、男女平等行動委員会と女性委員会とが連携し、連合山形三役との意見交換会や、トップリーダー男女平等参画推進宣言ポスターを作成するなど新しいことにも取り組んできた。また、2015年度が東北ブロック男女平等フォーラムの開催県であったことから、その成功に向け実行委員会を立ち上げ取り組んできた。

(9)山形大学との「寄付講座(テーマ:労働と生活)」は4年目を迎えるが、受講者は年々増加している。ブラック企業などが後を絶たない中、学生が実社会に出て働き生活するなかで、さまざまな課題解決のために、社会や仲間と関わりながら、連帯することで自ら解決を導き出すことができる「社会人」の育成を目標に取り組んできた。

(10)連合、中央労福協、労金協会、全労済の4団体合意(2005年8月25日)でスタートしたライフサポート事業は、現在山形県労働者福祉協議会の「生活あんしんネットやまがた」事業として、生活なんでも相談と無料職業紹介、講演会・セミナーの開催を中心に事業展開し、労働者のみならず広く県民の暮らしに寄り添い、問題解決の糸口さがしを担っている。また山形県から「総合的就業・生活支援事業」を受託し、山形県求職者総合支援センターを運営し、求職者の住まいや生活、就労、能力開発に関する相談に応じながら、生活の安定、再就職の促進を支援している。

(11)政策制度への取り組みについては、「政策制度確立委員会のあり方検討委員会」を立ち上げ、委員会の再編などを検討してきた。運営方法などについて、さまざまな角度から意見が出され、部会名や検討項目などの一部変更を行った。また、5部会において立案された政策を取りまとめ県議会協力議員と政策懇談会を行い、次年度の県予算へ反映するため9月下旬に「山形県予算編成に向けた連合山形の要請」を行ってきた。その後、県関係部署との意見交換会を実施してきた。また、雇用労働政策を国の労働行政に反映させるため、3月に労働局への要請も行ってきた。

(12)第47回衆議院選挙では山形県の3選挙区で民主党候補者を推薦し、連合山形が組織の総力をあげ必勝に向け取り組んできた。突然の解散で準備期間もなく厳しい選挙戦を強いられ、選挙区での当選を果たせなかったが、2区の近藤洋介候補者が比例復活により当選することができた。今後、衆議院選挙については常在戦場という意識を持ち、民主党県連・社民党県連と連携し、早期の候補者擁立に取り組まなければならない。

(13)政治不信や無関心さが払拭されない中で行われた第18回統一自治体選挙では、全国的に投票率が低下し、山形市議会議員選挙では初めて50%を切るなど厳しい選挙戦となった。連合山形は、山形県議会議員8名、市町村議員24名を推薦し、全員当選に向け組織を強化し取り組んできた。結果、32名全員の当選を果たすことができたが、政治勢力の拡大には至らず、地方議員のなり手不足の問題など課題は山積している。

(14)9月に施行された山形市長選挙では、梅津庸成氏を推薦し必勝に向け取り組んできた。今次選挙は、これまで50年続いた非自民市政の継承か刷新か、安保法制への対応が争点となる中、「オール山形」を前面に掲げ取り組み、最後まで競り合ったが、惜しくも当選を果たせなかった。今後、政党や関係団体などと選挙結果を分析し、来年の参議院選挙、再来年の山形県知事選挙に繋げていかなければならない。

(15)戦後70年を迎えた今年、戦争と原爆が招く悲惨な記憶を次世代へ継承するため、大手門パルズにて「原爆パネル展」と、親子を対象とした「平和の語り部鑑賞会(DVD)」を開催し、平和運動に取り組んできた。また、政府の強行採決を阻止するため「安全保障関連法案強行採決断固反対」の決起集会を開催し、世論喚起にも取り組んできた。今後も強行採決された法案の動向を注視しながら、引き続き本部と連携し取り組んでいく。

3.県内情勢について
 県内雇用情勢について有効求人倍率は、第26回定期大会時点の2013年11月で1.07倍、今年8月では1.19倍となり、1年半で若干の改善がなされ、現在も改善がゆるやかに続いている。しかし、「製造業」「非製造業」にかかわらず全産業で人員不足が拡大しているなど、倍率だけで雇用情勢を判断出来ない状況にある。正規雇用に係る有効求人倍率は今年8月で0.70倍となり増加しているが、人材確保が厳しい状況下で、非正規雇用から正規雇用へ求人を変更している企業もあると予想される。
 県内経済について、住宅建設は増加傾向が続いている。個人消費は、テンポは緩やかながら、総じてみれば持ち直しの動きとなっている。公共工事は、前年比マイナスが続き減少傾向となっている。こうしたなか、企業の生産活動は、電子部品・デバイスの減速などからやや弱い動きがみられるものの、県内企業の景況感は、足もとでは製造業を中心に改善している。
 このように、連合山形は取り巻く情勢と課題認識、本部方針の基本的な考え方を踏まえ、各構成組織・地域協議会が一体となって県内労働運動強化に向けて実践することを決意し、2016~2017年度の活動を展開する。

活動方針その1
「1000万連合」に向けた組織拡大・組織強化の着実な前進と連帯活動の推進による、社会的影響力ある労働運動の強化

活動方針その2
非正規労働者・未組織労働者・若者支援と参加の促進

活動方針その3
働くことを軸とする安心社会の構築に向けた政策・制度の取り組み

活動方針その4
労働条件の底上げと社会的横断化の促進とディーセント・ワークの実現

活動方針その5
男女平等社会の実現に向けた平等参画の強化

活動方針その6
政策実現に向けた政治活動の強化

  
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